80年代名盤⑨「THE POWER STATION」~1985 時代を象徴する”強烈”サウンド

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音楽
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今回は、1985(昭和55)年に当時人気絶頂だった英国バンド DURAN DURAN から派生したユニット、THE POWER STATION の1st.アルバムをご紹介します。

「ザ・パワー・ステーション」The Power Station (1985年)

ロバート・パーマー (Robert Palmer) :Vocal
アンディ・テイラー (Andy Taylor) :Guitar
ジョン・テイラー (John Taylor) :Bass
トニー・トンプソン (Tony Thompson) :Drums

DURAN DURANから派生したユニット

 

英国のバンドDURAN DURANは、1983(昭和58)年リリースの3rd.アルバム「SEVEN AND THE RAGGED TIGER」が全英・全米アルバムチャートでNo.1を獲得。

 

その後のワールドツアーも大成功に終わり、その模様を収録した初のライブビデオ/アルバム「Arena」(1984/昭和59年リリース)もビルボード誌アルバムチャートで4位、全米で200万枚となる大ヒット。

 

アフリカ救済プロジェクト「Band Aid(バンド・エイド)」にも参加するなど、名実ともにトップアーティストの仲間入りを果します。

 

しかしその一方で彼らの人気は、その”美しすぎる”ルックスを支持するティーンネージャーの女の子たちに支えられた「所詮はアイドルバンド」との見られ方が、ほとんどでした。

 

こうした見方に反発したメンバー達は、多忙なスケジュールの合間を縫って2つのサイドプロジェクトを計画します。

 

1つはVOCALのサイモン・ル・ボンとKey-Boardのニック・ローズ、Drumsのロジャー・テイラーの3人による「Arcadia(アーケイディア)」。

 

そしてもう1つが、今回紹介する、Guitarのアンディ・テイラーBassのジョン・テイラーによる、「THE POWER STATION」でした。

 

当初の計画はマルチ・ボーカリスト?

 

アンディとジョンの2人は「THE REFLEX」のリミックスでつながりのあったナイル・ロジャースから元Chic(シック)のドラマー、トニー・トンプソンを紹介されます。

さらに、Chicのベーシストであるバーナード・エドワーズが、超売れっ子だったナイル・ロジャースに代わり、プロデュースを務めることに。

 

アンディとジョンは、DURAN DURANのシンセ・ポップ・サウンドとは違う、レッドツェッペリンのようなゴリゴリのハードロックを志向。そこにトンプソンのファンクでヘビーなドラムが加わり、方向性が形作られてきました。

 

当初、曲ごとにゲストボーカルを迎えるプランもあり、候補にはミック・ジャガーやビリー・アイドル(!)などの名前も挙がっていたのだとか。

 

しかし、アンディが「マイ・アイドル」として憧れの存在だったロバート・パーマーとのセッションで状況は一変。そのドハマリ具合から「このユニットのボーカリストはロバートしかない」と決まったようです。

 

ロバート・パーマーとは

 

ロバート・パーマーは1970年代から活躍するブルー・アイド・ソウル・シンガー。知名度こそそこそあるものの、ブレイクする大ヒットもなく通好みの中堅、いぶし銀のような存在でした。

それ故に、結成当初は「アイドルバンドのDURAN DURANと、あのロバート・パーマーが?」と、違和感を覚える人の方が多かったと思います。

 

しかし、この化学反応が大爆発を起こすのです。

THE POWER STATION 始動

 

バンド名は、アルバムを収録したニューヨークのレコーディング・スタジオ「The Power Station Recording Studio」から。

ちなみにこのスタジオは、当時”世界最高峰のレコーディングスタジオ”とされ、

デビッド・ボウイ「レッツ・ダンス」
ザ・ローリング・ストーンズ「刺青の男」
マドンナ「ライク・ア・ヴァージン」
ブルース・スプリングスティーン「ザ・リバー」「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」
ブライアン・アダムス「レックレス」
ダイアー・ストレイツ「ブラザーズ・イン・アームス」

などのNo.1アルバムを、次々に世に送り出していました。

 

そして完成したわずか8曲入りのデビューアルバムは、世界中で驚きをもって迎えられました。

 

それまでどこにもなかった「強烈」な重低音のドラムサウンド、ファンクとハードロックの融合、そこに重なる、ワイルドでソウルフルなボーカル。「アイドルバンド」DURAN DURANの、キラキラのシンセ・ポップを想像していた多くの人々は、度肝を抜かれたことでしょう。

 

ビルボード誌 アルバムチャート6位を記録しますが、世間と音楽業界に与えたインパクトはそれ以上に絶大なものがありました。

 

なんといっても後に「パワー・ステーション・サウンド」と呼ばれた、特徴的なドラムの音色。
「トニー・トンプソンの躍動する強力なリズムに強烈なゲートリバーブをかけ、残響音を極端にブッた切る」このサウンドは、世界中で大流行。

 

日本では吉川晃司さんが「Rain-Danceが聞こえる」(アレンジャーは後藤次利氏)でいち早く取り入れ、いまや「80年代サウンド」の代名詞となっています。

 

そしてもう一つ、驚きを持って受け止められたのがアンディのギタープレイ。DURAN DURANで溜まりに溜まったストレスを発散するかのようなワイルドでハードな「弾きまくり」は、ジョン・テイラーいわく「アンディを檻から出してやった」。

 

そこに加わる、”いぶし銀”ロバート・パーマーのダンディでカッコいいい、大人の魅力溢れるボーカルと、豪華なブラスセクション。さらに、80年代っぽい煌びやかなシンセが、絶妙なアクセントになっています。

 

個人的にこの当時、ここまでハマったアルバムはほかにありません。

 

アルバム全曲解説

 

「THE POWER STATION」THE POWER STATION

Producer: Bernard Edwards
Engineer, Mixer: Jason Corsaro
Engineer: Rob Eaton
Engineer: Steve Rinkoff
Engineer: Tony Taverner
Composer: Andy Taylor
Composer: John Taylor
Composer: Robert Palmer

 

*以外はすべて All songs written by Robert Palmer, Andy Taylor and John Taylor

 

SOME LIKE IT HOT

 

イントロから鷲掴みにされる、問答無用のカッコよさ。意味もなく大げさでハイテンション。
このバンドとアルバムの成功は、この”衝撃”に尽きるでしょう。

 

アルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャート第6位、同誌Mainstream Rockチャート第34位、同誌Dance Club Songsチャートで第17位を記録。

 

個人的には、ロバート・パーマーのソロ・ライブ・アルバム「LIVE IN APOLLO」がベストテイクです。

 

MURDERESS

 

複雑なリズムのイントロから始まり、全編を通してアンディのヘヴィでエッジの効いたギターリフが光ります。

 

ギターだけ聴くとハードロックなのですがほどよいシンセがアクセントで、渋いオトナなファンキーな楽曲に仕上がっています。

 

LONELY TONIGHT*

 

ロバートとバーナード・エドワーズによる共作。
その後のロバートのソロにつながる、グルーブが気持ちいいムーディな世界観の楽曲です。

 

COMMUNICATION*

 

ロバート+アンディ+ジョンとデレク・ブランブルの共作。
3rdシングルとしてリリース、シングルチャート第34位を記録。

 

この楽曲がロバートとの初レコーディングで、これで「イケる!」との感触を得たのだとか。

 

GET IT ON (BANG A GONG)*

 

言わずと知れたT-Rex(マーク・ボラン)のカヴァー。

2ndシングルとしてリリース、シングルチャート第9位、Mainstream Rockチャート第19位。

 

ユニークなPVも、当時全盛の音楽ビデオ番組で話題を呼びました。

 

シンプルでライトなブギーを重低音でリメイクし、チョッパーのベースソロ+弾きまくりのギターソロが聴きドコロです。ベースソロはあまりにカッコよく、ジョンではなくバーナードが弾いてるんじゃないか疑惑もありましたねw

 

GO TO ZERO*

 

ロバート+ガイ・プラットの共作。

 

ベース+ホーンセクションにきらびやかなシンセが絡み、これまたグルーブたっぷりのオトナの楽曲です。

 

HARVEST FOR THE WORLD*

 

The Isley Brothers 1976年のヒット曲のカヴァー。ロバートと交互にアンディが唄っています。

 

メロディアスなオリジナルに比べ、ハードエッジなギターとパワフルでタイトなリズム隊によって、ハードロックに生まれ変わりました。

 

STILL IN YOUR HEART

 

アルバムラストは、モロにロバート・ソロの世界観の楽曲です。

シンセとピアノが印象的な、映画のサントラのような耽美的な世界観。

静かにフェードアウトして、アルバムはあっさりと幕を閉じます。

 

プロジェクトその後

 

本プロジェクトは当初アルバム、シングルカット、PV制作とアメリカの超人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」へのプロモーション出演(1985年2月)ぐらいの予定でした。

ところが予想外の反響に急遽、全米ライブツアーが刊行されることとなります。

 

しかしツアーには既にバーナード・エドワーズと共にソロアルバム制作を計画していたロバート・パーマーは不参加となり、代打としてマイケル・デ・バレスが新ボーカリストとして加入。そのメンツで世界最大のチャリティーライブ「ライブ・エイド」(1985年7月)にも出演を果しています(DVDなどには未収録)。個人的には、「ロバートのいないパワーステーション」にはまったく興味が持てませんでした。

 

そしてそこから約10年、1996年に突然の再結成。しかし今度は、ジョン・テーラーが不参加となり、ベースをバーナード・エドワーズ自らが務め、ニューアルバム「 Living In Fear」をリリース。

 

しかし、まったく話題にならず・・・

私も当然、買いました。しかしなんというか・・・ブリティッシュ・ハードロックでカッコいい、のではあるのですが、前作のトキメキ、キラメキみたいなものがまったく感じられなくて、自分でもビックリしました…。やはり”時代”なんですかね…。

 

しかし嬉しいこともありました。なんとこの時、このバンドとして初の来日公演があったのです!
私は1996年12月7日、渋谷公会堂に行きました。初めて生で見るロバート・パーマー、それもパワー・ステーション。

 

しかし、この年の4月、ベーシストのバーナード・エドワーズが、なんと日本でのシック再結成ツアー中にホテルで急逝。そのせいもあってか?ロバートは足元にある歌詞カード?進行表?を見ながら、センターから移動することもなく淡々とステージをこなしていたことしか、記憶がありません。。。

 

そして、それからさらに7年後、ロバート・パーマーは2003年9月に休養先のパリで心臓発作(享年54歳)、トニー・トンプソンは11月に肝臓がん(享年48歳)で相次いで急逝。これには驚きました。

 

結果的に、1度でも生でステージを観ておいて、よかったと思います。

 


 

▼カバーです(2015)

 

 

 

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