1984年、映画「すかんぴんウォーク」とシングル「モニカ」でセンセーショナルにデビューした吉川晃司さん。
私が彼を初めて認識したのは、1984年4月1日に日本武道館で行われた「第13回東京音楽祭」のTV中継でした。ピンクのスーツを着た男性アイドル、なのにジャニーズの「カワイイ系」ではなく、同性から見てもうらやましいほどの長身と逆三角形、足の長さ。
その後、歌番組で彼の姿を見ない日はないくらいのブレイク具合でした。楽曲も明らかにそれまでの男性アイドル歌謡曲とは一線を画していて、洗練されたロック調でありつつ、当時の流行りであるシンセを多用したデジタルなアレンジが、大村雅朗さんの仕事であることを知ったのはずいぶん後になります。
1984年3月発売の1stアルバム「パラシュートが落ちた夏」はアイドル色全開のジャケットですが、中身はノリのよい8ビートロックで、リゾート感溢れる世界観で佳曲揃いです。
そしてシングル「サヨナラは八月のララバイ」「ラヴィアンローズ」がヒットしたタイミングで満を持して1984年10月5日にリリースされた2nd.アルバムがこの「LA VIE EN ROSE」です。
アレンジャー 大村雅朗さん&プログラマー 松武秀樹さんコンビによるデジタルサウンドは、1曲目の「No.No.サーキュレーション」から「LA VIE EN ROSE」の流れでも完璧です。「サヨナラは八月のララバイ」「Big Sleep」など、この当時最先端だった「サンプリング」を駆使してのサウンドエフェクト(オーケストラヒットやシーケンサー、ガラスの割れる音など)は、とにかく斬新かつ衝撃的でした。
作曲陣は前作から引き続いてNOBODY、原田真二さん、伊藤銀次さんらのメロディアス組に加えて大沢誉志幸さんが加わり、よりロックっぽさが際立ちました。
作詞陣は麻生圭子さん、売野雅勇さんの売れっ子コンビに加えて新鋭の安藤秀樹さんが加わります。木崎賢治さんによる世界観プロデュースも見事で、西海岸を思わせるスケール感の大きな青春ストーリーシネマのようです。
参加ミュージシャンも豪華で、ギターに今剛さん、北島健二さん。ベースに奈良敏博さん。キーボードは西本明さんと富樫春生さん。サックスに矢口博康さん。いずれも凄腕の猛者だらけです。
この後、後藤次利さんアレンジ時代、布袋寅泰とのCOMPLEXを経て、セルフプロデュースのロックアーティストへと突き進むのですが、このトータルプロデュースの雰囲気と、硬質なデジタルサウンドの完成度は、今聴いても色褪せない名盤だと思います。
■収録曲
01.「No No サーキュレーション」 安藤秀樹/大沢誉志幸
02.「LA VIE EN ROSE」 売野雅勇/大沢誉志幸
03.「ポラロイドの夏」 麻生圭子/原田真二
04.「サイレントムーンにつつまれて」安藤秀樹/伊藤銀次
05.「サヨナラは八月のララバイ」 売野雅勇/NOBODY
06.「グッド ラック チャーム」 安藤秀樹/伊藤銀次
07.「Border Line」 安藤秀樹/NOBODY
08.「BIG SLEEP」 麻生圭子/原田真二
09.「She’s gone-彼女が消えた夜」安藤秀樹/大沢誉志幸
10.「太陽もひとりぼっち」 麻生圭子/原田真二
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