いまではひとつのジャンル、巨大なマーケットと認知されている「アニソン」。70〜80年代当時は「テレビまんが主題歌」と呼ばれ、オマケのような弱小ジャンルでした。そんな中、今回は水木一郎さん、ささきいさおさんと並ぶビッグ3の1人、子門真人さんについてご紹介します!
アニメじゃないのも「アニソン」の違和感問題
いきなり余談ですが、私はこの「アニソン」という呼び名には違和感があります。
「アニメ番組の主題歌」なら問題ないのですが、「特撮番組の主題歌」まで「アニソン」と括られるのがオカシイじゃん、という事です。アニメじゃない特撮主題歌もアニメタルとか…。
とはいえ、昔も「まんが(=アニメ)」じゃないものまで「テレビまんが」と括られてましたので、何十年も変わってないのですが。ほかに良い呼び方がないんでしょうね。
●子門真人さん
のっけから話が横に逸れましたが、今回の主役は子門真人さんです。
そうです、「およげ!たいやきくん」の人、と言わないとわからないかもしれないですね(もはや、それすらもわからないか…)。
70〜80年代、このジャンルの歌い手さんとしては水木一郎さん、子門真人さん、ささきいさおさんが3大メジャー、という印象です。
水木一郎さんは「熱血」、ささきいさおさんは「高貴」なイメージで、子門真人さんはカラッとした「陽性の解放感」というイメージ。
残念ながら1993年に引退され、ほかのお2人に比べ、知る人ぞ知る存在になりつつありますが、氏の伸びやかな歌声は、子どもごころに大好きでしたし、忘れられない存在なのです。
子門真人氏のキャリア
1966年
「藤 浩一(ふじ こういち)」の芸名で歌謡曲歌手としてデビュー
シングル盤5枚、ヒットに恵まれずに1年半後に引退
1968年
フジ音楽出版に入社
スタジオヴォーカリスト、アルバイトとしてCMソングを歌う
1971年
ライダー2号登場のタイミングで藤岡弘と交代し『仮面ライダー』主題歌「レッツゴー!! ライダーキック」を歌唱
番組の爆発的な人気とともに130万枚を超える大ヒット
1972年
円谷音楽出版に移籍(社員として)
楽曲管理の総責任者を務めるかたわら、『トリプルファイター』『レッドマン』『ジャンボーグA』『ファイヤーマン』など特撮テレビドラマ主題歌を多数手がける
1975年
『ひらけ!ポンキッキ』内で発表された「およげ!たいやきくん」が大ヒット
オリコンチャートでシングルチャート初登場1位、史上初の11週連続1位を記録
翌1976年には第9回全日本有線放送大賞特別賞、第5回FNS歌謡祭最優秀ヒット賞を受賞し、子門の代表曲となる
続く「ホネホネロック」も大ヒット
80年代に入るとアニメ主題歌の歌唱は減り、音楽プロデューサーとしての活動の傍ら『ひらけ!ポンキッキ』などで子供向けの歌を歌い、
1987年
再びフリーの歌手に転向
1993年
芸能界を引退
子門真人さんの代表曲
アニメ
* 科学忍者隊ガッチャマン
* ゼロテスター
* 空手バカ一代
* 勇者ライディーン
* UFO戦士ダイアポロン
特撮
* 仮面ライダー
* 快傑ライオン丸
* レッドマン
* 人造人間キカイダー(挿入歌)
* アイアンキング
* ジャンボーグA
* ジャンボーグ9
* ファイヤーマン
* 仮面ライダーV3(エンディング)
* キカイダー01
* イナズマン
* 電人ザボーガー
* 仮面ライダーアマゾン
* 仮面ライダーストロンガー(エンディング)
* 恐竜探険隊ボーンフリー
* プロレスの星 アステカイザー
* 猿の軍団
などがあります。
子門真人さんの特長
「複数のレコード会社レーベルと契約していたため、上記以外にも(オリジナルではない)主題歌のカバーバージョンの歌唱を担当していた」のだそうです。
子どもの頃から不思議だったのですが、オリジナルは水木一郎さんとか他の歌手だけど、(番組では使われていないのに)子門真人さんバージョンも存在する、のはそれが理由なんですね。
もう一つの特長、それは「雄叫び」。曲間に「イヤーォ」とか「ウォー」とか「ライディーン」とか。それらはほぼ、子門真人氏のアドリブと思われます。
日本人がこういうことするとダサく恥ずかしくなりがちですが、氏のは絶妙で最初からあったのでは?というくらい違和感がありません、というより、もはや雄叫びがないと違和感を感じるレベルです。
■印象的な楽曲
アニメではなんといっても「ガッチャマン」と「ライディーン」ですね。
*科学忍者隊ガッチャマン
「たいやきくん」でないとしたら、子門真人といえばコレ、という楽曲かもしれません。
*勇者ライディーン
水木マジンガーとの対比が印象的です。ライディーンはマジンガーよりもスタイリッシュで、神々しい明るさがあり、子門真人氏がピッタリです。
さらにアニメよりも作品の多い特撮ではなんといっても
*仮面ライダー(レッツゴーライダーキック)
でしょうね。ご存知、「仮面ライダー」の初代主題歌…ですが、オンエアでは当初は主役の藤岡弘氏歌唱バージョンが流れていました。藤岡弘氏が怪我のため降板して、2号ライダー登場!から、有名な子門真人氏バージョン(当時は藤浩一名義)に切り替わり、いわば二代目の主題歌でした。
▼藤岡弘さん→子門真人さん主題歌 聴き比べ
https://youtu.be/m8A56QHYJwI
また、エンディングの
*仮面ライダーのうた
*ライダーアクション
*ロンリー仮面ライダー
中では、
「ロンリー仮面ライダー」が、マニアの間で名曲とされています。
*キカイダー01
1作目の「人造人間キカイダー」はヒデ夕樹氏でしたが、続編の「キカイダー01」が子門真人氏。
前作が湿った、暗いトーンなのに対し、01はトランペットの音色にファズギターが印象的で「太陽電池がエネルギー」という、ド派手で明るい作風にピッタリでした。
*イナズマン
*イナズマンF
知る人ぞ知るハードコア特撮モノ。これまた電光放射でチョーリキショーライな作風に子門真人のクリアトーン ボーカル&雄叫びがピッタリでした。
*アマゾンライダー
のっけから絶叫。こちらもインパクトしかないコンセプト&ルックスのキテレツさに拍車をかける歌い上げっぷりが、子門流でイカしてます。
https://youtu.be/tvGKdbgAuuU
*ファイヤーマン
いまひとつマイナーなのですが、私個人的に楽曲のクオリティ的に好きなのがコレ。「地球が地球が大ピンチ、地球を地球を守るのだ」のファイヤーマンです。
▼幻の1989ライブバージョン、18分辺りからの生歌メドレーは必聴です
かつての「テレビまんが主題歌」はマイナージャンルでなにかとバカにされる風潮にありましたが、当時の作詞、作曲、編曲家さんたちのプロの仕事はなかなかどうして、聴きどころたっぷりです。
つづく
コメント
拝啓 サイトヘッド(SH)様にはよろしくお願いいたします。
*「Jヴォーカル史上、稀なる特異にして素晴らしい美異声の持ち主=子門真人」
初めてその異美声に接したのは記憶では1971年「ガッチャマン」と思いましたが、その個性的な風貌を拝見したのはやはり「たいやきくん」が最初でした。何でも当時の文献では、顔のニキビは酒の飲み過ぎによる肝臓から来る?と記憶しています。まずその声を初めて聴いた時に自分が感じたのはある歌手たちとの不思議な共通性」でした。それは
*「佐々木梨里(魔人バンダー) 朱里エイコ(恋の衝撃ほか) の真似の出来ない特異な美声」
上記のお二人の声をようつべ等で聴いていただければ解る通り「現代の如何なる歌手シンガーの皆さん方の個性的な美声すら霞んでしまう」程のインパクトでした。まさに衝撃です。
1985年頃「旧ユピテルにて旧特撮ヒーロー物の主題歌新録音企画」に全面的に協力した際、一番苦労したのが「魔神バンダーオリジナル歌手の佐々木梨里さんの声に近い人を探す事だった」と。いないのですよこういった個性的な声の人は。更に「朱里エイコ」さんはお元気でご活躍ならば必ず世界的なシンガーになっておられたはず。あの「類まれなるパンチの効いた美声に、トランペットがかすれた様なセクシー極まる美声」は当時の和田アキ子等問題にならない素晴らしさでした。では、子門真人さんの異美声とは何だったのか?
*「町田義人さんの高音をシンセで加工した様な機械的人工的な異美声」だと。
一見的外れな様ですが実は町田義人さんの高音は何故か子門真人さんの声質に近く、この声を例えば「アナログシンセのインターフェイス介してinし、フィルターである種の周期数を削り特定の週数を極端に持ち上げるとこういう声になる」と想像しています。
更にこの子門真人の異美声の物凄い点は「とにかく音程が正確で全然#bが無く、不思議と低音と高音とで音色の差が無いのが凄かった、、、どんなに上手い人でもどうしてもオクターヴがめっちゃくちゃ上下する曲などではボロが出ますが子門真人はこれが無かった。
「そんなんレコーディングなら幾らも修正出来んじゃん」とは間違いで、これはライヴを聴いても全く同じだったのは驚きです。更にこういう物凄く歌の上手い人に作曲する場合、正直「作曲家には限界点がほぼ無いのに等しい」ので、遠慮情け容赦なく「電信柱の音符が列記」出来るのです=一例「ファイヤーマン」(この曲はメロディもちろんアレンジもペット含めて電信柱だらけ!!) つまりまぁこういっては何だが「某氏」の様に歌が下手で音域も狭いとなると、作曲家サイドでも相当に難しいテクニックが必要になり制約も大きい、、、此処が全く自由に解放されたときに実は「上記の様な、吠えるアドリブさえ許される凄い名曲が誕生したのだ」と確信いたします。上記には無いが実は「ウルトラセヴンの海外版テーマ」も子門真人さんが歌っていて、これがまた物凄いド迫力!! アレンジも微妙にアジャストされもう日本版主題歌何ぞすっ飛ばされてしまう程のカロリー、エネルギーをぶちかましている、、驚きです。
かつてこういう物凄い実力派シンガーが日本に居た、、、今我々は彼の存在功績を決して忘れる事無く、次世代に語り継がねばなりません。サイトヘッド様ご訪問の皆様にもぜひ再評価をご期待申し上げます。 敬具