今回は、1973(昭和48)年に日本テレビで放送された特撮番組、”燃えろマグマの”「ファイヤーマン」を取り上げます。
「円谷プロ創立10周年記念番組」として制作された本作は、「特撮怪獣ものの原点回帰」を目指しますが、強力な裏番組と地味な作風が響き、視聴率で苦戦。
曜日と時間帯を変更、さまざまなテコ入れも行いますが、残念ながら当時としては短命に終わってしまいました。
「ファイヤーマン」
制作:円谷プロダクション/萬年社
日本テレビ系
日曜18:30~19:00(12話まで)/火曜19:00~19:30(13話以降)
1973年1月7日~7月31日
全30話
百花繚乱の特撮ヒーロー戦国時代
この1973(昭和48)年は、前々年から続く「第二次怪獣ブーム」の最盛期。
数多くの特撮ヒーローが生まれた年でした。
ざっと列挙してみると・・・(下線のヒーローは各紹介記事にリンク)
1971年1月~
「宇宙猿人ゴリ(スペクトルマン)」
1971年4月~
「帰ってきたウルトラマン」「仮面ライダー」
1972年4月~
「快傑ライオン丸」 「超人バロム.1」「ウルトラマンA」「変身忍者嵐」「レッドマン」
1972年7月~
「トリプルファイター」「人造人間キカイダー」
1972年10月~
「サンダーマスク」 「愛の戦士レインボーマン」 「突撃!ヒューマン」 「アイアンキング」 「行け!ゴッドマン」
1973年1月~
「ファイヤーマン」 「ジャンボーグA」 「魔人ハンターミツルギ」
1973年2月~
「仮面ライダーV3」
1973年4月~
「流星人間ゾーン」 「白獅子仮面」 「ロボット刑事」 「ウルトラマンタロウ」 「風雲ライオン丸」
1973年5月~
「キカイダー01」
1973年7月~
「スーパーロボット レッドバロン」
1973年10月~
「イナズマン」 「ダイヤモンドアイ」 「鉄人タイガーセブン」 「行け!グリーンマン」
いやはや、凄まじいラインナップ、まさに特撮戦国時代。
ゴールデンタイムに民放各局で、日替わりでこれらの特撮ヒーロー番組が、しのぎを削っていました。
「ファイヤーマン」誕生
「ファイヤーマン」は、「ウルトラマンタロウ」「ジャンボーグA」と並ぶ「円谷プロ創立10周年記念番組」として制作されました(「日本テレビ開局20周年」の冠も付けられました)。
ウルトラシリーズとは別のヒーロー番組として制作した「ミラーマン」が予想以上に人気を博したことでイケイケの円谷プロでしたが、「ウルトラマンタロウ」(TBS)と並行して「ジャンボーグA」(NET)と「ファイヤーマン」(日本テレビ)、計3つの番組を制作するのは、実にチャレンジングです。
その企画意図は「怪獣特撮番組の原点に還る」。本格的なSFへの回帰を目指し、企画書には「海と地底への挑戦:これまでの特撮作品でコスト面から敬遠された海底や地底を部隊に、円谷プロ特撮の本領を発揮して見せる」と記されています。
企画当初の仮題は「レッドマン」で、「ウルトラマン」から続く、円谷プロの伝統的な仮タイトルです。ヒーローとしてのデザインも、特長的な巨大な目を除けばシルバーと赤を基調とした、比較的シンプルなものになっています。
前述の通りこの時期、数々の特撮ヒーローが乱立し、各々が差別化要素を競い合っていたので、逆にシンプルな王道路線で原点回帰することが、「老舗」としての円谷プロの矜持だったのでしょう。
しかし、そのせいで他のヒーローものに比べ、子どもたちに「地味」な印象を与えてしまうのです。
ちなみに・・・「ファイヤーマン」は英語圏では「消防士」。
海外では「MAGMA MAN」と呼ばれています。
円谷プロと萬年社の共同作品
本作は、円谷プロと萬年社の共同作品です。
萬年社は大阪に本社を構える、日本最古の広告代理店。「鉄腕アトム」に始まり、当時「愛の戦士レインボーマン(NET)」、「ワイルド7(日本テレビ)」、「流星人間ゾーン(日本テレビ)」などを手掛けていました。
両社は1972(昭和47)年に「レインボーマン」の名称を商標登録していた円谷プロに対し、萬年社が商標権の移譲を打診したことがきっかけで、交流が生まれていました。
あらすじ・出演者
地球に天変地異など大異変の兆しが現われ、絶滅したはずの恐竜が怪獣となって次々と出現。地底深くの秘境・アバン大陸の長老たちから派遣された岬大介(誠直也)は、ファイヤースティックで炎の超人・ファイヤーマンに変身して怪獣を倒す。ファイヤーマンは、宇宙人ではなく地底人なのです。
政府は海野軍八(睦五郎)を隊長として「地球科学特捜隊SAF(SCIENTIFIC ATTACK FORCE)」を結成。岬はSAFの隊員として、ファイヤーマンとして地球のために戦う。登場するメカニックのデザインは秀逸でした。
本作が初主演の誠直也さんは、後のアカレンジャー。
他に、円谷プロの常連・岸田森さん、平泉征(現:平泉成)さんも出演しています。
苦戦する視聴率とテコ入れ
1973年1月7日。期待と共にスタートした「ファイヤーマン」ですが、視聴率で苦戦します。
その理由は、日曜18時半の放送枠の裏番組に、当時すでにオバケ番組と呼ばれていた「サザエさん」(フジテレビ)があったからでした。
そのため、放送3カ月後にはあの「サンダーマスク」の後番組として、火曜19時の枠に移動。しかしながらこの火曜19時台もTBSは「おくさまは18歳」から続くドラマ枠(当時は「赤い靴」)、フジはタツノコプロ「けろっこデメタン」という“強敵“がいました。
「ファイヤーマン」は時間帯変更後にオープニングの構成を変え、登場する怪獣を「先見せ」したり、強化アイテム「ファイヤーブレスレット」、新必殺技「ファイヤーダッシュ」を使うといった“テコ入れ”が行われました。
ユニークな登場怪獣
前述の通り、「ファイヤーマン」は怪獣特撮の原点回帰を目指し、登場する怪獣もオーソドックスな恐竜タイプがほとんどです。
しかし、中にはユニークな怪獣もいくつか登場しました。
第10話「鉄の怪獣が東京を襲った!」に登場した「ロボット怪獣バランダーV」
第19話「宇宙怪獣対原始怪獣」に登場した「宇宙怪獣ムクムク」
第24話「夜になくハーモニカ」に登場した「音霊怪獣ハモニガン」
などが有名です。
各話、なかなかのシュールな戦いが見られますので、未見の方はぜひご覧になってください。
子門節が冴えまくる主題歌
主題歌は阿久悠さん作詞、小林亜星さん作曲、編曲がボブ佐久間さんで子門真人さんの歌う名曲。
数ある特撮ヒーローものの中でも、私は屈指の好きな楽曲です。
「ファイヤーマン」
作詞:阿久悠 / 作曲:小林亜星 / 編曲:ボブ佐久間 / 歌:子門真人
おわりに
いかがでしょう。今回は1973年「特撮ヒーロー戦国時代」に生まれ、他の作品に比べてあまり話題にならない「ファイヤーマン」をご紹介しました。
思えば、2023年で放送からちょうど50周年。
この機会に、少しでも本作にスポットが当たることを祈っています。
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